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立葵
劇団の予告ポスター夏に入る
「碇」てふ名を持つ神社実梅落つ
母の日に母思ひをり思はれをり
短夜や推理小説読み終へぬ
命ごと投げ出すやうに髪洗ふ
ほうたるや庵主が守る遊女の碑
父の日や父ゆずりらし指を持つ
筆里の動物塚やさみだるる
煩はしき事忘れたし単帯
花栗や手帳に残る男文字
梅雨寒や男の愚痴を聞いてをり
運の良さ悪さは言はず立葵
身だしなみ程の香水つけて逢ふ
爆心の旧日銀や半夏生
猫好きの家らし丸き猫ふうりん
初日いま神ゐますごと広ごりぬ
月あかり
窓際の猫の肩にもある秋思
飾り気のない女です曼珠沙華
良妻も賢母も捨ててレモンティ
思ふほど思はれぬ夜ちちろ鳴く
父と肩並べて久し虫の声
長き夜を座す母でなく妻でなく
いわしぐも内弁慶の猫とゐる
さみしんぼうえのころ草の群れて咲き
うそ寒や泣かぬ女の夜明くる
みどり色多き刺し糸小鳥来る
うそ寒や唇薄き人のうそ
高層のビルが切り取る鰯雲
眉細き新妻青き蜜柑買ふ
恋慕てふ不思議不思議や青葡萄
天窓をするりと抜けて月あかり
猫の恋
恋猫の尾の先までも女なり
大顔の傷が勝利の猫の恋
実験の動物の碑や寒明くる
魂のはてまで女人花の下
春昼のベンチを鳩と分かち合ふ
気がかりのまたふたつみつ黄砂降る
等隔に干さるるシャツや鳥帰る
雛飾る町家町家のほの灯り
混ざり気のなき色の群れ黄水仙
何もかも許してしまふ春満月
菜園は一坪弱や柿の花
慎重に切る母の爪ゆすらうめ
くちばしの赤き鳥ゐる薄暑かな
トルソーの軽き装ひ五月かな
単帯たたみ女の顔でゐる
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